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Clavia Nord Stage 3

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「Nord Stage 3」はスウェーデンClavia DMI ABが2017年にリリースしたステージ・キーボードである。73鍵、76鍵、88鍵の3モデルがあり、私が購入したのは76鍵の「HP76(Hammer Action Portable 76)」だ。Claviaは1995年リリースのバーチャルアナログ・シンセサイザー「Nord Lead」で名を馳せたメーカーだが、近年は、ステージ・キーボードを主力としている。Claviaのステージ・キーボードは、比較的低価格の「Nord Electro」と高価格の「Nord Stage」がある。Nord Electroはアフタータッチなしの鍵盤で、ピッチベンドスティック、モジュレーションホイールを持たない。Nord Electroの初期製品はセクション(ピアノとオルガン)のどちらかを選んで弾くものであったが、新しいモデルでは同時使用が可能になり、シンセセクションも追加された。Nord Stageはアフタータッチ付きの鍵盤で、ピッチベンドスティックとモジュレーションホイールを備える。Nord Stageは「パネルA、B」を持ち、各セクションを二つずつ使える。高価格なだけあってNord Stageの方が多機能だが、そこまでの機能は必要としないプレイヤーも多く、どちらかというと、Nord Electroの方が売れ筋ではないだろうか。

Nord Stage 3が持つセクションは、ORGAN、PIANO、SYNTH、EXTERN、EFFECTである。オルガン、ピアノ、シンセで操作パネルが別になっており、別種のキーボードを操作している感覚を味わえる。ピアノセクションは2GBの波形メモリーを持ち、Nord Piano Libraryのデータを入れられる。シンセセクションは480MBの波形メモリーを持ち、Nord Sample Libraryのデータを入れられる。Nord Sample Editorを使うと、WAVファイルを編集してNord Sample Library互換のデータを作れる。

アフタータッチ付きの鍵盤を備えるステージ・ピアノはほとんどない。また、ステージ・ピアノの中で最も多機能なシンセセクションを持つのはNord Stage 3である。この2点が、私がNord Stage 3を選んだ理由だ。

Nord Stage 3 HP76を弾いて感じるのは、中途半端であることだ。ハンマーアクションの1段鍵盤で弾くオルガンは奇妙なものだし、ピアノは本物のグランドピアノやFender Rhodesと比べると、とても長い距離を隔てた存在に思える。シンセはもともと本物がないので偽物感はないけれど、操作パネルの面積が限られていることから来る中途半端さがある。アフタータッチはかなりきつく押し込まないと効果が出ないタイプで、これは私の好みではない。

不満は数々あるけれど、それでも、Nord Stage 3のピアノは独特の味があり、ついついこれで録音してしまう。ピアノの弱音を出しやすいことも特筆すべきだろう。長く使っていくことになりそうだ。

参考リンク

サウンド

サウンドコメント
A:11 Royal Grand 3D

Nord Stage 3のファクトリープリセットの一番最初にあるピアノ。元ネタはヤマハS6だそうな。S6ってちゃらちゃらした音だと思ってたけど、これはしっとりしてますなぁ。まあ、1台1台違うのは当然だから。ポリ数の多さ、リリースの長さ、ノイズの少なさが感じられる。

A:11 Royal Grand 3D with Pedal Noise

「Nord Triple Pedal」を購入して録音を3点実施した。まずはダンパーの実験だ。演奏を始める前に、ダンパーペダルをスコスコと踏んだ。音量を上げて再生すると聞こえるはずだ。ペダルノイズは、ボタンでオフにすることもできるし、プラスマイナス6dBで音量を調整できる。最後にペダルを離す時のノイズは、目立つほどではない。

A:11 Royal Grand 3D with Sostenuto Pedal

続いてソステヌートペダル。最初にGCE(ソドミ)の和音を左手で弾いてソステヌートペダルを踏み、左手は離し、右手でちょこちょこ弾いた。ソステヌートペダルを踏む時点で押していた鍵盤のダンパーは弦から離れたままになるが、後から弾いた音のダンパーは戻るので音が止まる。自分の曲で使うとしたら、どんな風にすればよいのだろうか。うーむ。

A:11 Royal Grand 3D with Soft Pedal

最後はソフトペダルの実験だ。ここでは左足でソフトペダル、右足でダンパーペダルを踏んで演奏した。ソフトをほぼ踏みっぱなしで、中間部で1小節ずつ2回だけソフトを外している。ソフトの有無による違いはわかるし、つながりもまあまあ自然であると思う。

Saw01

ここからは、シンセセクションを一つだけ使って作った基本音色の紹介だ。この「Saw01」はクラシック波形の鋸歯状波を1個使ったリード音。4秒くらいのところに出てくるビブラートはアフタータッチによるもの。13秒くらいのところに出てくるビブラートはピッチスティックを揺らしたものだ。フィルターはMoogを模した「LP M」。ディレイを少しかけている。よくできたバーチャルアナログだと思う。太さと鋭さのバランスがいい。

Pulse1

先の「Saw01」の波形を「Square」に変え、モノレガートにしてポルタメントを少しかけ、ビブラートをホイールでかけたもの。カットオフとレゾナンスの調整もした。モジュレーションホイールでかければ十分なビブラートがかかるのに、アフタータッチだとかかりが弱い。サウンドメニューの中の設定「Synth Vibrato Dly Amount」を、ディレイビブラートの時だけでなく、アフタータッチ時にも有効にしてくれれば、強められるのではないだろうか。Nord Stage 3のシンセは、モノにするとフルタイムでポルタメントがかかり、モノレガートにするとフィンガードのポルタメントがかかる。ヤマハDX7はポリでもポルタメントをかけることができたので、その後に買ったシンセではがっかりすることが多い。

ATMorphVib

通常のビブラート機能でアフタータッチビブラートをかけるのではない方法を試した音色。オシレーターのコンフィギュレーションを「1 Pitch」にし、アフタータッチでオシレーターセクションの「LFO」をモーフしてビブラートをかけた。少しはかかりがよくなるが、十分とは言えない。ヤマハのDX7とかEX5とかMONTAGEでは、発音時の揺れをアフタータッチビブラートで出せるのだが、Nord Stage(持っているのは初代EXと3)では難しい。

SawStrings

クラシックの鋸歯状波を選び、コンフィギュレーションを「4 Detune」にしてデチューンをかけて揺らしたもの。ユニゾンを「1」にしてステレオ感も付加した。ディレイはなし、リバーブを「ROOM 2」で少しかけている。バーチャルアナログの素性の良さはさすがだ。Nord Stageは、電子ピアノの中で最良のシンセを搭載した機種であると私は思う。

SawBrass

鋸歯状波を一つ出し、MOD ENVでカットオフを大きく揺らして作ったシンセブラス。バーチャルアナログの素性の良さは、この音でも感じる。エンベロープジェネレーターが3ポイントであるため、サスティンレベルをうまく調整できず、もどかしい。EGは4ポイントあった方が使いやすいがパネル面積が限られているので、まあ仕方ないかとは思う。揺らしたくなかったので、エフェクトはリバーブを少しかけただけ。

FmStrings

クラシックの正弦波を選び、コンフィギュレーションを「13 FM2」にして、モジュレータをキャリアと同じ周波数にしたままで(値でいうと「0 semi」)FMをかけて作ったストリングス。FMだけだと倍音をうまく制御できないので、カットオフとレゾナンスを使った。FMのコンフィギュレーションが2個しかない。Claviaのこれまでの機種に比べ、控え目である。ユニゾンは「3」にしている。ユニゾンを3にすると揺れ過ぎることが多いのだが、この音はこれでOKだった。Nord Stage EXはユニゾンがつまみで、あれは良かったなぁ。

PwmStrings

PWM(Pulse Width Modulation、パルス幅変調)を使ったストリングス。PWMは音が低いところが揺れ過ぎるので、上できつめにかかり、下で控え目にかかるように調整することが時々あるのだが、Nord Stage 3でそれはできないようだ。

SuperSawStrings

Nord Stage 3のオシレーターセクションには「SUPER」という波形カテゴリーがある。その最初にある「Super Wave Saw」でストリングスを作った。ローランドのSuperSawはデチューン量を変えられる機種が多いが、Nord Stage 3は、1と2で違う程度で、可変ではない。それでも、文句なくいい音だ。

WavEp1

Nord Stage 3のオシレーターセクションには「WAVE」という波形カテゴリーがあり、ピアノ系を含む多くの波形が入っている。ここでは「Wave EPiano 1」を選び、オシレーターコンフィギュレーションを「12 FM1」にしてFM変調をかけた。ユニゾンを「2」にしてステレオ感を付けた。クラシック波形でなくてもFMかけられるんだ!というのは感動した。NordのピアノライブラリにあるFMエレピは今一つなので(ないよりマシではある)、シンセ側で作る方がよさそうだ。

FormantLead

Nord Stage 3のオシレーターセクションには「FORMANT」という波形カテゴリーがある。その最初にある「Formant Wave Aaa」を使ってみた。オシレーターコンフィギュレーションを「1 Pitch」にしてMOD ENVでせり上がりを付けた。エンベロープを逆にすることはできないようで、ちょっと残念である。ビブラートをたっぷりかけたかったため、モジュレーションホイールでかけた。

ソング

ソングコメント
Just Released

Nord Stage 3の「E:11 Velvet EP Wheel」を弾いていてできた曲。Velvet GrandとEP8 Nefertitiがレイヤーになっており、モジュレーションホイールでバランスを変えられる。EQ、コンプ、リバーブを少し変えた。dbx QuantumでEQとコンプをかけた。

250年

最初のプリセット「A:11 Royal Grand 3D」の独奏。ただ、初期状態から全く音色を変えていないかというと、記憶が定かではない。メトロノームなしでSonarにMIDI録音し、一発無修正。リバーブは、当初はなしでいいかと思ったのだが、それも手抜きな気がして、t.c. electronic Reverb 4000の「HomeRoom」を少しかけた。

風鈴

Nord Stage 3のプリセット「K:54 Supersoft Vocals」を弾いていて作った曲。我が家は、夏になるといくつかの風鈴を窓辺(室内側)に吊り下げる。風鈴は「チリンチリン」と鳴るイメージだが、風が強いと「チリチリチリチリ」とうるさく鳴り続ける。そういう時は、窓の開け方を少な目にして調整する。今日は、朝は少し雨が降ったが、次第に回復し、雲の間からの青空がきれいだった。

梅雨

「Royal Pad PedalH」を使用。Royal Grand 3DにSoft Pad 1が重ねられた音を少し編集し、ペダルでパッドの音量を調整できるようにしたものだ。リバーブはオフ。SonarにMIDI録音した。メトロノームありでクォンタイズなし。後でテンポを少し上げた。BからAに戻るところはインテンポで弾いて、後でテンポをマウスで書いた。最後のリタルダンドは、メトロノームを無視して弾いた。MR-2000Sを回した録音時に、ペダルを少し踏み込んで、途中からパッドを重ねた。

ランダムに変調される音符たち

ポリフォニックであっても、ボイスごとにLFOが用意されているということはないようで、和音に同じようにLFOがかかる。それが面白い。弾いているのは上の譜面であるが、少しずつ音数を増やしている。シーケンサーに録音してそれを再生しつつ、Nord Stage 3のつまみをいじって、最初はフィルターにLFOの変調をかけ、途中からオシレーターのピッチにもかけている。ピッチスティックを揺らしたりもしている。最後のあたりではテンポを落とし、LFOの変調をやめて、きれいな音で終わるようにした。本当にそうなっているかどうか、自信はないけれども。エフェクトは内蔵のピンポンディレイとリバーブ少し。

私が子供だったころに

Weather Reportのデビューアルバム「Weather Report」の最初に収録されていた曲「Milky Way」のザビヌルのエレピを想像して音を作り、独奏したもの。メトロノームなしで無修正。レコーダーMR-2000Sを録音状態にしてシーケンサーをスタートさせ、後で追加したフェイザーのレイトとアマウント、リバーブのドライ/ウェットをいじりながら録音した。

Cool Your Lusts

Nord Stage 3でプログラムをピアノでイニシャライズして、最初に出てきた「Royal Grand 3D」を弾いたもの。シーケンサーに録音しているが、メトロノームなしで手弾き無修正。t.c.electronic Reverb 4000の「Soft Hall」をかけているが、大量ではない。

思い出のホール

Nord Stage 3のRoyal Grand 3Dに、Reverb 4000の「Large Hall」をかけて弾いたもの。譜面は下。メトロノームなしで弾いて、一発ではうまくいかず、途中からやり直したり、ピアノロールやイベントリストで修正をかけたりした。この程度のものも一発で弾けないのだから情けない。

子供のピアノが響く街

Nord Stage 3で「Royal Pad PedalH」を選び、ペダルでPadを切ってピアノだけにして弾いたの。音色を選んで弾いたわけではなく、自分音色の最初にこれがあるので、音色はどれでもいいや、という時はこれを使う。

To Be A Princess

Nord Stage 3で「Royal Grand 3D」を独奏。プログラムはファクトリーのものではない。イコライザーで高域を少し落とした。Eventide Eclipseで「Reverb 8」を少し追加した。最後のリタルダンド以外はメトロノームに合わせて弾き、クォンタイズを8分でかけた。ただ、Bメロから戻るところは少しポーズが欲しかったので、テンポチェンジを書き加えた。

5月31日

Nord Stage 3のプリセット「A:51 Royal Pad MW」独奏。CakewalkにMIDI録音したが、途中で止めなかったし、クォンタイズもピアノロール等での修正もしていない。テンポの揺れが気になるところや、ベロシティが気になるところもあるが、直さなかった。音色の方は若干編集した。リバーブはEventide Eclipseの「Reverb 8」。


Nord Stage 3プリセット「B:52 Tight Tines MW」独奏。フェイザーをコーラスにしてリバーブを深くしたり浅くしたりローをカットしたりしていた。CakewalkにMIDI録音して、最後のリタルダンドを除き8分でクォンタイズ。Aメロに戻る前にはテンポチェンジを入れて空きを増やした。

樹々の中

Nord Stage 3のプリセット「Nordic Overland」を編集して独奏。右手のリードは元々は正弦波だったが、それでは弱かったため、三角波に変えてカットオフとレゾナンスを調整した。最終的には、コンプレッサーをオンにしたり、パンを調整したり、左右のバランスを取ったり、いろいろと変えた。

日々少しずつ

Nord Stage 3「Royal Pad PedalH」独奏。裏のシンセパッドも少し鳴らしている。内蔵のリバーブにEventide Eclipse「Reverb 8」を追加してリバーブは多め。MR-2000Sに録音してパソコンに移した後は、先日買ったOzone 9を試している。プリセットを選んでかけてみている段階だ。

生き物のビート

Nord Stage 3「SawStrings」独奏。この音色は自分で作ったもので、鋸歯状波にユニゾンをかけただけの単純な音色である。今回はローランドAIRA MX-1のフィルターつまみの動きとBFX(Beat FX)のオンオフをMIDI録音して変化を付けた。工夫して妥協すれば、ライブ独奏でも似たような音が出せるのではないか。まあ、私が今後ライブをすることはないと思うけれど。

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