VX600は、赤井電機が1988年に発売した、アナログ・ポリフォニック・シンセサイザー。当時の定価16万5000円。ベロシティとアフタータッチ付きの37鍵を装備しているが、ベンダーもモジュレーションホイールもない。なぜかというと、木管楽器を模したコントローラー「EWI1000」、金管楽器を模したコントローラー「EVI1000」の専用接続端子を持ち、それらで使うことを想定していたからである。鍵盤はオーディション(音の確認)に使うことを想定していたのであろう。だったらモジュールにすればよかったじゃんか、と言いたいところだが、EWI1000が入手できない現在においては、鍵盤があったからこそ、普通のシンセとして寿命を延ばせた、とも言える。
このシンセを持っていて、大変困ったのは画面が見づらくなったことであった。バックライトがほとんど光っていないのが下の写真だ。
バックライトのシートを交換しても、大して改善されなかった。
カメラを最適な場所においてなるべくはっきりするように撮影し、画像に加工をほどこして、この程度である。とても実用にならない。そこで、2018年4月に、アカイVX600の液晶ディスプレイを購入した。当時の価格は1万6627.33円で、送料が1149.52円、通関手数料が1630.55円で、トータルすると2万593.22円かかった。安くはない。4月14日に注文して4月23日に到着した。
表面はこんな感じ。
裏面は基板になっている。
装着した様子がこれ。やっと、使える状態になった。
さて、AKAI VX600は、6ボイスのアナログ・ポリフォニック・シンセサイザーで、各ボイスごとに2つのオシレータを持つ。オシレータはVCO(Voltage Controlled Oscillator)で、これはVX90も同様である。当時のアナログ・ポリフォニックは、VCOを持つものと、DCO(Digitally Controlled Oscillator)を持つものがあった。DCOは安定していて安価な製品に多く使われていた。VCOはチューニングが安定せず、折を見てチューニングをしないといけないという不便さがあるが、音の魅力という点では、VCOが少し優っていたかもしれない。ビンテージなポリフォニックシンセサイザーはとても壊れやすく、私は、JUPITER-6、Oberheim Xpander、MKS-30、MSR-2を捨てた悲しい経験を持つ(Matrix 1000は壊れる前に売った)。今手元にあるのは、VX90、VX600、MKS-50、MKS-70、Alpha Juno-2だ。どの機械も、次に電源を入れた時に正常動作するかどうかはわからない。ドキドキである。
VX90とVX600はどちらもそうだが、キーアサイナーが洗練されておらず、鍵盤を弾いていて「あれ?」と思うことがある。単音を弾いた場合と複数の音を弾いた場合の音量の差が大きく、他社製品のようには弾けない。ひとくせあるシンセである。VX90は1オシレータだが、VX600は2オシレータなので、音作りの幅は広がる。VX600には「モジュレーションマトリクス」と呼ばれる画面があり、アフタータッチでビブラートをかける、といったことができる。注意しなければならないのは、「PRESSURE」がキーボードのアフタータッチで、「M.PRESSUR」がMIDI入力端子から来るアフタータッチであったりすることだ。なんて面倒な…。
下の音を聞いて、「これがほしい!」と思う人は買ってもいいだろう。ただ、いつ壊れるかわからないことは覚悟した方がいい。