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KORG ARP ODYSSEY Module(ODYSSEY-M)

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「KORG ARP ODYSSEY Module(ODYSSEY-M)」はコルグが2016年に発売したアナログ・シンセサイザー・モジュールだ。2015年にミニ鍵盤付きの「KORG ARP ODYSSEY」、2016年に鍵盤なしの「KORG ARP ODYSSEY Module」、2017年にフルサイズ鍵盤の「KORG ARP ODYSSEY FS」、2018年にFSとシーケンサーSQ-1をセットにした「KORG ARP ODYSSEY FSQ」を発売した。2021年の現在、すべて製造、販売を終了している。ただ、ソフトウエアシンセサイザーの「KORG Collection」の一つとしてODYSSEYがあり、そちらの販売は続いている。

最初に出たミニ鍵盤のODYSSEYはMIDIでピッチベンド情報を受信することができなかったが、ODYSSEY-MとODYSSEY FSはできる。ただ、いずれのハードウエアも、コントロールチェンジ1番(cc#1)でモジュレーション情報を受けることはできない。

オリジナルのARP ODYSSEYと、その復刻版であるKORG ARP ODYSSEYは異なる点がある。オリジナルはRev(リビジョン)が1、2、3とあり、大きく言えば、1は白ボディにキャップタイプのスライダー、2は灰色ボディにキャップタイプのスライダー、3は黒とオレンジのボディに横長つまみのスライダーが採用されていた。音作りの要であるローパスフィルターはリビジョンによって異なり、コルグは「12dB/Octで鋭くパンチの効いたサウンドを作り出すTYPEⅠ(Rev1)、24dB/Octで太い低音が心地良いTYPEⅡ(Rev2)、そしてレゾナンスを上げても非常に効きが安定するTYPEⅢ(Rev3)」と説明している。Rev3はキャノン出力を持っているが、それはバランス接続にはなっていなかったらしい。ピッチを変化させる機構はRev1と2の途中までつまみだったが、後にPPC(Proportional Pitch Control)と呼ばれるパッドになった。

KORG ARP ODYSSEYは、カラーリングはRev1、2、3のすべてが製品化された。ただし、Odyssey-Mは1と3だけで、上の写真は1である。キャノンの音声出力はバランスになった。MIDI、USBも付いた。ピッチベンドはPPCを採用した。ローパスフィルターは3種類の中から一つをスイッチで選べる。

オリジナルのARP ODYSSEYで、まともに稼働するものは希少だ。私は以前オリジナルのRev1を買ったが、調子が悪くなって売却した。容易に安定したODYSSEYを入手できるので、コルグのODYSSEY復刻は意味あるものであったと思う。

ARP ODYSSEYはminimoogと並ぶ、コンボ型シンセサイザーの草分けである。ただ、音を作るための機能の取捨選択は大きく異なる。minimoogにはピッチベンドホイールとモジュレーションホイールがあったが、ODYSSEYはつまみまたはPPCで、伸ばす音にビブラートをかけるmoog的な演奏は難しい。minimoogにはフィート切り替え(オクターブ切り替え)のロータリースイッチがあるが、ODYSSEYはスライダーなので、オクターブを変更すると丹念なチューニングが必要になる。ライブでできるかというと考えてしまう。

minimoogはモノフォニックだが、ODYSSEYはVCO1が低音優先、VCO2が高音優先になっており、2音の和音を演奏できる。これは面白い使い方もできるが、一方で、弾き方によってピッチ変化とフィルター/オシレーターの変化が一致せずに雑音を出してしまうことがある。LFOまたはエンベロープジェネレーターによるパルス幅変調、オシレーターシンク、リングモジュレーター、ハイパスフィルター、ノイズのホワイト/ピンク切り替え、サンプル&ホールド、エンベロープジェネレーターによるピッチ変調、LFOでエンベロープジェネレーターをトリガーする、といった機能は、minimoogにはないが、ODYSSEYにはある。

こうした機能の比較をすると、ODYSSEYの方が、スタジオで凝った音色を作るのに向くと言える。KORG ARP ODYSSEYでは3種のローパスフィルターから一つを選べるため、音作りの幅は一段と広い。一方で、ピッチベンドとビブラートのかけやすさという点では、minimoog(もしくはそれ以降のピッチベンダーにバネが入ったシンセサイザー)の方がODYSSEYより優れている。ODYSSEYでminimoog的な演奏をしたい場合は、MIDI/CVコンバーターを用意してCVを揺らすことを検討するとよいだろう。下の「Pulse Lead with Pro Solo mkII and Eclipse」はその例だ。

Weather Reportのキーボード奏者であったJoe(Josef)Zawinulは、ARPの2600やODYSSEYを愛用し、moogのシンセは、たぶん使わなかった。Joeは音を伸ばす時にビブラートを加えるというminimoog的な演奏はせず、2600やODYSSEYのリードトーンには、遅いビブラートをかけっぱなしにすることがあった。KORG ARP ODYSSEY-Mでも、かけっぱなしの緩いビブラートは美しく響く。ODYSSEYを演奏する機会があったら、ぜひお試しいただきたい。

参考リンク

サウンド

サウンドコメント
VCO1 only

VCO1の方形波を出して、フィルターを少し絞ってレゾナンスをちょっと上げた音。リバーブはt.c. electronicのReverb 4000。ビブラートはPPCでかけた。弾くのに使った鍵盤はヤマハMONTAGE 6で、5オクターブの鍵盤をすべて使ってみた。ODYSSEYは広い音域に対して安定していると思う。低域はかなり迫力がある。ハイパスフィルターがあるので、それを使うと低域の量をうまくコントロールできるだろう。

VCO1 and VCO2 Unison or Duophonic

ODYSSEYのVCO1は低音優先で、VCO2は高音優先である。両方を出力して鍵盤を2個押さえると2つの音を演奏できる(デュオフォニック)。単音で弾くと、離鍵前に押鍵してしまった場合に、音の移り変わりがずれて雑音が生じる。アナログのデュオフォニックシンセというと、コルグ800DVもあるが、800DVはフィルターとアンプが2系統あるので、同じではない。ヤマハCS40Mもオシレーター、フィルター、アンプのすべてが2つある。Sub 37もデュオフォニックができると思うが、これがどんな感じだったかは覚えていない。

Pulse Lead with Pro Solo mkII and Eclipse

Kenton ElectronicsのMIDI/CVコンバーター「Pro Solo mkII」を出してきて、CV/GATEをODYSSEYに送って演奏した。こうすると、完全なモノフォニックになる。また、アフタータッチでビブラートをかけられる(cc#1も可能)。ただし、ODYSSEYのポルタメント、ピッチベンド、オクターブ切り替えレバーは使えなくなる。波形はパルスを1個。アンプリチュードのエンベロープはARタイプを使っている。アタックを遅くしているが、レガートで弾くとリセットされないので、最後の一部を除き、あまりレガートしないように心がけた。

ソング

ソングコメント
Back To School(Hell?)

ARP ODYSSEYソロ。フリーテンポでMIDI情報をCakewalkに録音し、レコーダーMR-2000Sを録音状態にしてそのシーケンスを再生しながら、VCO2のFMスライダーを左手で、LFOのFREQスライダーを右手で動かしてビブラートを調整した。ディレイはローランドMX-1内蔵のもの。管楽器風の味わいがあるのは、12dB/オクターブのRev1フィルターであるからだろうか。

モノシンセとディレイマシンのための舞曲

ARP ODYSSEYソロ。机に向かって思い付いたメロディを譜面に起こす時に、部分的に拍子が変わっていることに気付いた。ODYSSEY-MはTRG OUTとGATE INをパッチケーブルでつないで、ADSR EGをシングルトリガーにした。そうするとLFOを使えないのだが、まあ今回はそれでよしということで。ディレイはローランドMX-1のMFX「2 Pan Delay」でタイムは4分音符。CakewalkとMX-1を同期させると、微妙にクロックが上下し、それがディレイ音の変化として出てしまって具合が悪かったため、テンポだけ合わせて同期はやめた。ノートデータをCakewalkに記憶させ、レコーダーを回してシーケンスを再生しながら、ODYSSEY-MのVCO-2レベル(1オクターブ下にセット)とVCF FREQを動かした。

デュオフォニック・シンセサイザーのために

ARP ODYSSEY-M独奏。ODYSSEYは、VCO1が低音優先、VCO2が高音優先、というのが標準状態なので、デュオフォニックのアナログシンセサイザーであると言える。ただ、フィルターとアンプは1個だけである。1音だけを弾くとVCO1とVCO2の両方が同じキーで発音し(同じ音程とは限らない)、2音を弾くと別のキーで発音する。これはまことに珍妙なもので、ピアノやオルガンやエレクトーンやポリフォニックシンセは、1音を弾いた時より2音を弾いた時の方が音量が大きくなるのだが、ODYSSEYの場合、1音を弾いた時より、2音を弾いた時の方が少し小さく聞こえる。ユニゾンよりパワーがなくなるというべきだろうか。

ODYSSEYのデュオフォニックをどう使うべきかよくわからないのだが、今回はそれを試した。VCO2は、VCO1の2オクターブ下にしてある。そうすると、2音を弾いた時、上の音が低く鳴る。これまた珍妙である。ピアノやオルガンやエレクトーンやポリフォニックシンセでは、2音を弾いた場合、上の方が目立つ。今回のODYSSEYの場合、下の方が音程が上になるので、そちらがトップノートになって目立つ。弾いていて、違和感ばりばりであった。

あと、2音を弾いた場合に、鍵盤を離す(リリースする)タイミングが同じでないと、早く離れた方は、もう一方へピッチを変えようとする。これはかなりの難物で、ピアノロール画面で音の長さを調整せざるを得なかった。また、アンプエンベロープのリリースは短くせざるを得なかった。

リバーブは、ローランドMX-1のディレイ7「Hall」を使った。ディレイはリバーブにもなる、ということは、Roland - The Ultimate Guide To The AIRA MX-1 Mix Performerに書いてある。

最後のリタルダンドを除き、8分でクォンタイズした。Aダッシュに戻る前にテンポチェンジを入れて、少し間を入れた。けっこうノイズの混入があって、最後の音が消えた後はそれが目立つ。dbx QuantumでGateをオンにしたが、取り切れなかった。


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