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KORG Nu:Tekt NTS-1 digital kit

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「Nu:Tekt NTS-1 digital kit」はコルグが2019年に発売したデジタル・モノフォニック・シンセサイザーである。私は、NTS-1を2019年11月23日に購入し、2019年12月25日にその出力端子を壊した。本来はTRSミニ端子からステレオの音声が出力されるのだが、壊してしまい、モノ出力になってしまった。それがあまりにショックで、なかなかこの記事をまとめることができなかった。ただ、このページを作るにあたって1カ月間に録音した下のファイルを聞き、その1カ月にNTS-1で幸福だったことを思い出した。

さて、NTS-1はキットとして提供され、自分で組み立てるシンセだ。ハンダ付けは不要で、そんなに難しいわけではない。下の写真は組み立て前のパーツ群だ。

NTS-1はUSB端子からの電源供給を受けて動作する。パソコンのUSB端子に接続すれば、電源供給を受けられるだけでなく、MIDIデータの受信もできる。ただ、パソコンのUSB端子に接続すると、パソコンからのノイズの影響を受けて、出力音が汚くなる。それを避けるには、USBのACアダプターでノイズが少ないものを選んでそこから電源を供給し、MIDI信号は別途MIDI端子で送るとよい。下の写真はその様子で、青いプラグがMIDI、その右の黒いプラグが給電用のUSBだ。

NTS-1のMIDI入力端子はミニTRS(Tip-Ring-Sleeve)で、通常のDIN端子のMIDIからミニTRSへ変換するケーブルは付属しない。私は家のケーブルを材料に作成した。正直、面倒であると思う。また、USBを給電のみとして別途MIDIを接続する方法を採ったとしても、NTS-1の音声出力はあまり強力ではなく、接続先によってはあまり良い音がしない。いろんなものに接続して相性の良いものを見付ける必要がある。

NTS-1の音声出力端子はミニTRSで前面左にある。上の写真の左下に出ているプラグは音声出力用のものだ。1端子でライン出力とヘッドホン出力の両方を兼ねる。NTS-1を操作しながら鍵盤を弾くので、NTS-1をなるべく操作しやすい位置に置きたいと考えた。ところが、音声出力のケーブルが鍵盤にかかる。それが嫌で、ケーブルにくせを付けて後ろに回すようにした。そうしたら音声出力端子に横向きの力がかかり、前述のようにステレオ音声の片方しか出力されなくなってしまった。涙。

NTS-1を買い直そうかと考えたが、やめた。prologue-16を持っているので、そちらを使うことにした。

NTS-1は、prologueのデジタルオシレーターを1ボイス分切り出して、それにデジタルのフィルター、アンプ、エフェクターを追加したものと考えられる。デジタルオシレーターは、prologueと同様に、ユーザーオシレーターのロードができる。prologueでNTS-1と同じ音が出るわけではないが、音の傾向は似ている。

prologueのことを抜きにして、NTS-1は買うに値するシンセサイザーであろうか。コルグは1万円を切る「ガジェット」「おもちゃ」的シンセサイザーを過去に多くリリースしてきた。monotronやKaossilatorがそうである。NTS-1はきょう体の大きさと価格が、そのクラスに属する。ただ、フルデジタルであるため機能は豊富で、音作りの幅はかなり広い。特に初期バージョンではモジュレーション、ディレイ、リバーブという3種のエフェクトを同時に使えるようになっていた(2020年1月リリースのv.1.03ではリバーブとディレイの同時使用はできなくなった)。NTS-1は安価で小型だが、「ガジェット」「おもちゃ」の枠を超える機能を持つシンセサイザーであると思う。

ただ一方で、コルグは他にも魅力的なシンセサイザーを多数リリースしている。volcaシリーズは面白い。monologueはNTS-1のようなエフェクターを持ってはいないけれど、2個のオシレーター、音色名表示が可能なメモリー機能、上質な鍵盤を持つ。4音ポリフォニックのminilogue xd、8音ポリフォニックのprologue-8、16音ポリフォニックのprologue-16は、明らかにNTS-1の上位に位置するシンセだ。NTS-1を演奏するのはとても楽しいが、時間をかけて録音などの作業をする際は、少し高額な機種を選んだ方が、作業が楽ではないだろうか。

参考リンク

サウンド

サウンドコメント
Saw with Delay

NTS-1はモノシンセで、音色の記憶機能はない。電源を入れると鋸歯状波がエフェクトなしで出てくる。それにディレイを少しかけて、prologueのつまみをいじってコントロールチェンジを送って適当に音を変え、手弾きしたのがこの録音だ。NTS-1とprologue-16のコントロールチェンジ対応表を下に示す

Percy in NTS-1

ここから5点はユーザーオシレーターを入れた例。まずはhammondeggsmusicのPercyだ。ポルタメントをかけられると面白いのではないかと思った。ただ、実際にやってみると、頭のパーカッションの音がきつく、シンセリードっぽくはなりにくい。

Souper in NTS-1

同じくhammondeggmusicのSouperである。NTS-1はオシレーターが1個なので、デチューンできるのは嬉しいかも。

dmFume in NTS-1

Roll-log Soundsの「Fume(2-op wavetable FM)」のデモ版。Roll-log Soundsのものはprologueでは今一つちゃんと動いていないように思ったが、NTS-1ではけっこういい感じであった。 

dmSyng in NTS-1

同じくRoll-log Soundsの「Syng(formant oscillator)」のデモ版。シェイプモジュレーションを少しかけた、と思う。私の腕では歌っている感じにはならないが、オシレーターのバリエーションとしては、入れておきたいと思った。

Scan in NTS-1

同じくRoll-log Soundsの「Scan(wavetable scanning)」。Bank Mode(たぶん)パラメーターでいろんな波形を呼び出せる。

NTS-1 Bass with Pa1000 "Standard Kit Amb"

NTS-1のベースとコルグPa1000の標準ドラム音の例。Pa1000のシーケンサーに録音してクォンタイズをかけた。NTS-1がベース向きかというと疑問だが、使えないわけでもない。

ソング

ソングコメント
Moonriser

鋸歯状波を出し、フィルターを絞り、アタックとリリースを少し上げ、「Riser」と名付けられたリバーブ(このごろの流行であると誰かがコメントしていた)を深めにかけた。prologue-16の鍵盤を弾いてコルグM3にクォンタイズして録音し、prologue-16のつまみをいじりながらMR-2000Sに録音した。

I Will Go There

NTS-1のアルペジオを鳴らして全体の長さを決めるところまでやり、M3のドラムを加えた。音色は「U-D000: Electro Rock Kit」で、パターンは、「P144: R&B 1[HipHop]」から147までをRPPR(Realtime Pattern Play & Recording)で並べ、適当にトリガーしている。叫び声など個別のキーも足している。MR-2000Sを回した状態で、アルペジオのカットオフとレゾナンス、ドラムのカットオフをいじっている。

My Dear Digital Delay

オシレーターは「Waves」。シェイプに少し変調をかけている。ディレイを大きくかけ、コーラスも少し。ディレイに合わせてKORG M3のシーケンサーを141.08bpmに設定し、8分音符のクォンタイズで弾いた。音符が決まった後で、MR-2000Sを回してprologue-16のつまみを回しながら録音。カットオフ、レゾナンス、フィルターのEG INT、アタック、コーラスデプス、ディレイデプスなどを変えている。

Silent Night

上で紹介したユーザーオシレーター「Scan」をアルペジオ(maj、長さ24)で演奏。コルグM3のシーケンサーにトリガーを録音し、それにprologue-16とM3のメロディを重ねた。当初作ったものはNTS-1をパソコンに接続した状態で作ってしまい、ノイズがひどかったのでUSB端子にACアダプターを差したのだが、そうすると元の音は飛ぶわけで、作り直しても同じものにはならなかった。操作面でのこの再現性のなさが、NTS-1らしい。

反転遅延のための音頭

上の譜面に多少の即興を加えたもの。リバースディレイによって、アタックのある音はアタックのない音になり、フレーズは逆転する。どの時点で逆転するのかよくわからない。弾きながらディレイのTIMEとDEPTHを調整し、その後でM3のシーケンサーのテンポをそれに合わせた。

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